何かを極めるということ

朝7時のニュース以外、ほとんどTVを観る事がないこの頃ですが、今年のお正月に放映された「イチロースペシャル」を観ました。やはりこの人にはコーチングの立場からも気になるものがあります。この人を嫌いな人がいるとしたら、どういうどういう人でどこが嫌いだろう、などと考えて観ていましたが、その後に「プロフェッショナル」という番組ではインタビュー中心に編成されていたとの事。彼の語った内容に関連し「何かを極める力」についてメール・コーチングに書いていらした方があり、「思考・意志・感情」の在り方や関連性を話題にした事があります。昨日の日曜日にたまたま2回分を一緒に再放送するという事が分かり、午後の2時からの放映をみました。映像の仕事にも携わった私としては、番組の編集にはいささか不満がありますが(同じ場面を繰り返し繰り返し挿入する手法や「○○が明かされる」というような前振りなど)まあそれはそれとしてやはりイチローは純粋に人間として魅力のある人物だなあと思いました。
上記のメールを送って来た人の主旨は、かつて私のワークショップの折りに聞いた「思考・意志・感情」の働きの中で「意志は無意識化したときに働く」という事がずっと気になっていたのだが、イチローの話す事を聞いていて「この人は自分の意志を無意識化してきたんじゃないだろうか」と思った、というのです。鋭い視点です。
ワークショップで行ったのは、普段私たちが何気なく行為していることは殆ど無意識で行っているがそれゆえに習慣化した力は強い(脳化学者の茂木健一郎氏もインタビューの中で無意識の力の方がずっと強い、と強調されていましたね)だから一度その自分の行為の根拠や感情のリアクションなどを意識化して見直し、それを最初は意識的に変えてみる。それが無意識化した時、新たな習慣になるというささやかな実験をワークショップ内で行い、その上で何かを極めた人、偉業を成した人というのは、習慣を変えるというのみならず「自己承認のレベルを高めて意志を無意識化してきた人だ」という話をしたと思います。
茂木氏が「今の若い人たちに、自己流でもいいんだよ周りを気にせずにやれ、と言うとしたら、イチローさんならなんと言いますか?」という主旨のインタビューをした時、イチローの答えは「それは自己承認が最高でなければいけないということでしょうね。自分が自分に対して一番厳しいということ」と語っていました。
うーん。たしかに「意志を強めてそれを全うする事」というような答えだったらメールをくれた彼も聞き流していたかもしれないな、と思いながらイチローの「言葉化する力」もすごいなあとあらためて感じました。