日本でいちばん大切にしたい会社

日本でいちばん大切にしたい会社              
メルマガ<GNN/No.2634:2008.08.24>より転載


数日前から急に涼しくなりましたね!また暑くなるのかしら。
この夏、頭が停止していた方、色んな事に振り回された方、おちついてわが道を歩んでいる方もそれぞれに、活動しやすい季節がまた巡ってきますね!
さて8月3日に配信しました「真夏の考察」に関しては「その1〜3」に関して様々なメールをいただきありがとうございました。その続編を書かなければと思っておりますが、今日はその前に別のテーマです。
mixiのマイミクさんのひとりのユニークな書店長:かみつけ岩坊さんが「この本○○册プレゼントします!」という大胆な決断発言!をされたものですから、本を自分で買わないなんて。。。。と心苦しく思いながら実はたいへん嬉しく送っていただくことにいたしました。
その本が、「日本でいちばん大切にしたい会社」 坂本光司著 あさ出版 1400円です。
著者は法政大学院創造研究科の教授で、これまでに6000社をフィールドワークされているそうで、この本には5社+αの企業が紹介されています。
送っていただいた礼儀として、読後感はすぐにお送りしたのですが、その劇中
劇で未来塾21の山田塾長には「塾生の方々にご紹介を」とメールし、失礼ながらマーカーだらけの本をお送りしましたら、この本に取り上げられている会社のひとつとすでにご縁があったり、ロスの熊野さんをはじめとして興味を持って下さった方がいらして嬉しいかぎりです。
以下は私の読後感ですが、文中に出て来る「電話の相手」も早速買って読んでくれた模様ですので、昨夜入っていたメールを一番下に転載します。かみつけ岩坊さんは本屋さんなのに「この本、宣伝するだけでいいの?」とい
う私の質問に「僕のところで注文もらっても大変ですから」という太っ腹な方です。ぜひ興味のある方は最寄りの書店でお求めください。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2008年08月13日 11時44分

「日本でいちばん大切にしたい会社」ありがとうございました。昨夜一気に読み終わりました。
とても色々な事を考えさせられました。。。詳しく書かせていただきますね。マーキングしながら大事なページには付箋を貼ったんですが、その数は6個です。これを書きながらどのページかを、もう一回見て行きますね。
その前に全体としての感想なんですが、とても面白かったです。。。懐かしかったというか、まず著者がどういう世代なのかが気になりました。坂本光司さん1947年生まれでいらっしゃるんですね。私が50年ですから同世代。
もしも今30代の方がこれを書いたとしたら、私の感動は3倍くらいになったかもしれないな。
この本の冒頭に「五人に対する使命と責任」がまとめられています。懐かしかったと書いたのは「そうだよ。私たち、こういう考え方をするように教わってきたよね〜」という印象かな。
例えば小学校の理科の時間でしょうか、人間は万物の霊長なんて事が教科書に書いてあって、それがどういうことかなんて授業。。。人間が動物と違うのは、弱肉強食なんじゃなくて、強いもんが弱いもんを、豊かなもんが貧しいもんを助けるものなんだ。。。なんていう風景を思い出しました。
長じて1970年代の初期が私たちが社会に出た時期ですが、あたりまえのようにそういう意識のインフラを持っていたのではないでしょうか。。。一番目の夫と私は、最初から「大企業に勤める」という発想が無かったので(歯車は嫌だという考えと同時に、そうでない生き方が選べると言う時代性もあったのでしょうね)、20代前期から営んでいた小さなデザイン工房も事業が成長する事=従事するスッタッフの数を増やすことは、その生活が保証できる収益をみんなで産み出す、それも面白い仕事を創りながら=が前提でしたし、事業を大きくしない(事業を大きくする事は目的意識が違う所にある)って発想だったし、設備投資などで仕事をしやすくするために銀行から借入れするとは考えても「はじめに資本ありき」という発想の起業はなかったように思います。「資本」ではなく「仕事」を作る事がスタートでした。
ただ、もちろん時代は変わり始めていました。大企業で働くお父さんたちは、上記のような意識のインフラを家庭で話す機会などなかったかもしれないし、70年代最後期に広告宣伝業界はもういやだ、と私が感じ始めて教育関連に転業し始めた頃から、社会の二極分解は加速していった感があります。それでもこの本に出て来る経営者の方々のような矜持を持った同業者たちは「大手代理店の下請け孫請け手先ではなく、独自クライアントの社外ブレーン
だ」という気概を持って仕事をしておりましたが、バブル以降は全滅です。オフィスをたたみ転業した人や個人でクライアントに気に入られて仕事をしている少数を除いて。。。
この本の貴重な(いえあるべき姿としての)五社も、例えば中村ブレイスの創業者が米国から帰国したのが1974年とありますね。それ以前に創業の会社も、創業者の意志がちゃんと引き継げていたり、継いだ人間の発想が豊かだったりしてあたりまえだった意識のインフラをちゃんと育てている、そしてそれぞれその職種とその文化が独自の路線で生抜く事を可能にしたのだと感じられます。
やはり「自分の仕事を愛している」ことが、ひしひしと伝わってきますものね。80年代に私が企業研修や経営者相談などの仕事をしていた頃は、中小企業にもまだまだこういう気概はありましたが、坂本氏が書いておられる「一から五番の順番を勘違い=30P=付箋の一個目です」の方向へ「転向」して行った企業も多々あったように思います。吉兆のように創業者が美学とも言える理念を持っていたのに、その一部を継いだ人間が間違いを起こす企業もありますが、私が体験した(関わりを持った)企業の中ではこれから継ごうという3代目がこの五社のようにまともな考えを持っているのに、2代目の経営者が「これからの時代はそんな事いってちゃダメだ」と「転向」を迫るようなケースもありましたよ。3代目の経営者に頼まれてずいぶん親子喧嘩に付き合いました。(^^;

この本の中で私が一番感動したエピソードは、バスのガイドさんがトイレを借りた話です(伊那食品工業)。(あれ、そのページには付箋貼ってないです)。伊東で「ままごはん」をやっていた時、近所の旅館の女将と仲良しになりましたが「泊まりのツァーの運転手さんとガイドさん『ままごはん』で夕食するように言っておくね」って言ってくれるの。その運転手さんやガイドさんも、この本のガイドさんと同様の事を言ってましたよ。ひとりの人間じゃなくて道具みたいだって。
もうひとつ感動したところはやはり「出版のエピソード」ですね(ここが6個目のポストイットでした)。私の実感としても、こういう仕事の成立の仕方はたくさん体験してきているので。
さてあと4個の付箋は・・・まず38p「人・物・金」の所でした。90年代は人・物・金・情報」とか言って「資本ありき」の起業がボコボコでてきましたね。
私は「経営者が勘違い」というよりも、一部の経営者たちは、しっかり「会社は株主のものだ」と「学んで」きたのだと思います。個人的な生育歴に留まらず、社会の空気ですからそういう価値観を持って育ってきた方々に、どうやってこの本を読ませるか。実はこれが現在私が当面している状態でもあるかな。

さっきいただいたメールの返信に書いた事ですが、80年代初期に私の研修を受けた方(当時高校生)で、数年前にベンチャー・キャピタルによる会社の社長に就任していたのですが、諸事情のため、彼自身は今月末で辞めます。
その彼から昨日電話があった時、ちょうどこの本が届いたばかりだったので紹介し「辞めるなら○○さんと××さん(経営陣)にこの本一冊づつプレゼントしたら?」と言いましたら「僕はすぐ買います。でも彼ら、読まないっすよ。。。」「そうだよね〜〜」・・・読んで感じる事ができる状況状態を祈りたいですが、会社がこけても無理かな。。。この彼が読んで感じた事はまた、機会があったらお伝えしますね。
残りの付箋は、3個目は51p、日本理化工業の大山さんが「人間にとって”生きる”とは、必要とされて働き、それによって自分で稼いで自立することなんだ」と気づいたというところ。4個目の付箋は82p「わが社はなんのためにこの世に生を受けたか」という伊那食品工業の「良い会社」ではなくて「いい会社」というところ。5個目の付箋は151p柳月の創業者田村さんが、ドイツやフランスからも職人を呼んだというところ。同じページに「2代目はその背中を見て育った」とありますね。

著者が30代だったら3倍感激したとか、二極分解してきたとか上に書きましたが、私も決して世代や時代によって分離しているのではなく、今の若い人にも連綿とDNAのように生きている精神文化を信じるし、それを触発して一緒に成長していける大人もいるし、「勘違い」しているだけで刺激を受ける事を待っている経営者もたくさんいると思います。
この5社は業種は様々ですが、共通するのは、規模を大きくしていない。オリジナル商品である。急成長を目指さない。社員の生活の安定が主体。などなど学ぶべき点はほんとに多いと思います。GNNでも紹介しますね。もしかして、この全文も掲載していいかな。
ちょっと尻切れトンボかもしれませんが、いったんここで送ります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

8番目のパラグラフに書いた彼が、感じて書いてくれたメールは以下です。彼自身も転機を迎えていますが、自分の本質的な価値観や感受性を改めて感じられて私も嬉しいな、と感じたエピソードです。

On 2008/08/24, at 2:05, ____ wrote:

澄さん こんばんは、
「日本でいちばん大切にしたい会社」買いました。
一番目の会社(チョークの会社)を電車の中で読んでいたら、なぜか涙が出てきてこらえるのが大変。
人前で読むのは危険な本です。(笑)